古代の音楽(紀元前3000年頃〜)


紀元前、神話の霧につつまれて、音楽はその神秘性により存在した。

音楽が始まったのはいつ頃からか分からない。言葉より前にあったという説は正しいと思う。また、世界の多くの民族は音楽神授説を信じ、自然発生説を認めてきた。インド、エジプト、ギリシャにはそれぞれ美しい音楽神話があって、神々の名によって楽器が作られ、音楽が作られてきた。その他にも多くの音楽起源説があるのでそのうちの3つを紹介する。

・「言語起源説」・・・ルソーが主唱。歌の旋律やリズムは、言語の抑揚、アクセント、そして感情的表現による誇張によって形成された。

・「異性吸引説」・・・ダーウィンの説。動物の交尾期の奇声や姿態をつくることと同様に、人の音楽衝動も、進化論の法則からの本能的現象。

・「呪詛起源説」・・・タイラーの説。原始人の生活では、音楽や歌舞は、呪詛的、宗教的行事と不可分の関係で、その為に音楽が形成された。

音楽が発生してから、ギリシャの全音音階にいたるまでの経路は、発掘遺品を参考とし、推測するしかない。

いわゆるオリエント古代文化と呼ばれる、スメル、エジプト、アッシリアの音楽生活は、王墓の壁画や、彫刻、粘土版、楽器などにより、当時の王宮生活と付随してうかがわれる。
例えばエジプト王朝の壁画にみる音楽図からは、農耕民族としての祭典があり、音楽行進がある。そこには舞姫や、供え物を捧げる婦女子がいて、楽器にはクラッパー(拍)、シストルム(がらがら)、手太鼓などが行進している。祭典に奉仕する音楽家は世襲で、太陽神の賛歌をうたい、ハープで伴奏している。

これとまったく照応するかのように、インド、中国では異質の文化が作られ、東洋古代音楽の二大源流として、後生の近隣諸民族に影響を与えた。

そしてギリシャ文化がエーゲ海(地中海)に始まる。代表的な楽器のキタラ(弦楽器)、アウロス(二本笛)は神話にも出てくる。音楽の守護神アポロや、キタラの名手オルフェウス。酒の神であるディオニュソスは、アウロスの官能的な音色を好んだ。これらの音楽は、ギリシャで起こった演劇の伴奏としても奉仕する。紀元前776年にはオリンピアードが制定され、全ギリシャ民族の音楽、体育競技が行われた。ギリシャ、特にスパルタでは、音楽と体育が、国民教養の二大教科であったのである。

これはエジプトのハープ。3000年前の第19王朝時代の遺物。


ギリシャの音組織は、キタラの調弦に出発し、完全4度音程を基礎として、5音音階、全音階(7音音階)を作った。そして理論的に完成させたのが、ピュタゴラスである。ピュタゴラス音階の原則によって、ギリシャの音階が安定し、18世紀に平均律音階が登場するまで行われていた。

今日のヨーロッパ音楽は、ギリシャ音楽の栄光の影を負っている。その最たるものが、科学的方面から音楽をみた、アリストテレス、ピュタゴラスなどの音響学的貢献である。そして精神的方面では、プラトン一派の倫理的、哲学的考察がある。今日の音楽心理学や、音楽美学の扉を開いたものである。

紀元前といっても、その時空には想像も及ばない。しかし人類が道具を使い、生活をしていた。音楽があって、思考が働けば、現代と変わりないような気さえする。本当に不思議だ。