現代音楽


ロマン主義の主観性に対して、客観非情主義の抵抗が現れる。これは第一次世界大戦の、無惨な、廃墟の中にあったドイツ音楽家の真実の叫びに他ならなかった。ブゾーニらによって、感情を排した絶対音楽が主張され、シェンベルクは12音技法を考案し、調性を離脱した新しい音楽の道を開いた。

◆現代の作曲家について

今日の音楽の様相は、実に複雑である。これは、科学や交通の発達にともなったもので、民族音楽やジャズ音楽までが、もはや一民族や、限られた地域の音楽ではあり得なくなったこと、ラジオ、テレビ、レコードの普及と発達が、従来と違った可能性を示したこと、12音音楽、4分音音楽、電子音楽などが次々に試みられること、それとは全く逆な方法で、100年前には考えられなかった古い音楽が復興し、ギリシャ時代の題材を用いて、超時代的な作品も作られるなど、今日の音楽の様相を書き並べることさえ、容易ではない。
現代に生きる芸術家には、保守的であれ、前衛的であれ、音楽史の一端を刻み、次の世代に愛される芸術遺産を生み落とすことが、大きく期待される。 どの時代にも現代音楽というものは、理解されにくいものであった。ベートーヴェンの後期の作品も、当時の現代音楽であったにかかわらず、当時の人からは理解されなかった。今からみれば、ベルリオーズやワーグナーの音楽も、すでに古い音楽となっているが、それが現代音楽に属していた1世紀前には、その時の社会から理解されなくて、あざけられ、ののしられていたことは、当時の批評などで知ることができる。今日の現代音楽が、今の現代人から全面的に歓迎されないのも、宿命的な因果といえるかもしれない。

◆新音楽について

第一次大戦後、思想的にも経済的にも大きな変動が起こり、ロマン主義は完全に影をひそめ、これに代わって厳しい機械的、物質的なものの考え方が主流をしめるようになった。これが「新音楽」の主張であり、その流れはこうである。

1.まず第一次大戦の頃、「反ロマン主義」の形で現れる。これは戦争の非常的な衝動から生まれた思想的産物で、美術にも立体的、未来派が現れている。バルトークの「青髭公の城」や、ストラビンスキーの「ペトルーシュカ」「春の祭典」は、その初演当時は非難ごうごうであったが、次第にその意図が理解されるようになった。 反ロマン主義のモットーは、①文学的連想や印象を器楽的に処理し、すべての強い感情表現を排する。②不協和音を好んで使用し、機能和声からの開放。③きびしいリズム感を採用し、時にはリズムを複合させ、均斉とか、定型の動機の使用を禁ずる。④多楽章、長楽章などの形式的構成を排する。⑤管弦楽法の開放。などがあった。

2.そしてこれは、やがて「新古典主義」に結集される。これはベルリンを中心に、ブゾーニらによって、「バッハに帰れ」「モーツァルトに帰れ」をモットーにして、新しい楽風を主張したグループであった。主なる特徴は、感情を排して絶対音楽を構成することである。ストラビンスキーやシェンベルクなども、反ロマン主義時代には模索的な奇矯な作品を書いていたが、この運動がはじまってからは、協奏曲、ソナタ、パルティータ、トッカータ、パッサカリアなど、古典派の作曲形式を求めるようになった。バルトーク、プロコフィエフ、サティーやフランス6人組もこの傾向の作品を書いた。ショスタコーヴィッチの交響曲、ハチャトゥリアンのバレー音楽など、ロシアからも現れた。

3.反ロマン主義と同義の、「新即物主義」は、ドイツでのヒンデミットらの一派にあたえらた称呼である。「画家マチス」は、フルトヴェングラーの指揮で初演され、大成功をおさめた。

◆新音楽の技法

ここで、新音楽の技法を紹介する。現代音楽では、多調、無調がさらに新しい様式を加えた。現代はすでに歴史ではない。現象そのものである。

絵画にカディンスキーの表現派が出て、その友人のシェンベルクが音楽に取り入れ、ピカソの立体派が出て、同じ街に住んでいたストラビンスキーはこれに影響されると言う様に、造形芸術、文学ともに密接な関係において変転し続けるのである。

■12音技法

シェンベルクによって体系づけられた新しい音構成。12半音が、すべて同じ価値を持つことが原則で、近親関係なしに独立して存在する。調整があってはならないから、主音、属音、導音を意味するものがない。

一つの楽句が、12個の半音によって、ある音列(セリー)をつくる。この一音列の中には、同じ音が二度入ってはいけないし、一つが抜けてもいけない建前になっている。同じ音を二度も使うと、その音に比重がかかって調性を感じるおそれが生じるからである。

楽想は感情を離れて、知的に配列され、数学的序列がその支えとなる。

シェーンベルクは何人かの優れた弟子を育てた。ベルグは12音の理論を抒情的に発展させ、ウェーベルンは、もっとも前衛的な12音の作曲家である。

■機械主義音楽

音を機械的に処理するもので、純客観的な作風といわれた。例えばヒンデミットの「トッカータ」などで、それらの目標は、無機的構成の美しさで、その鑑賞は、構成力にのみかかっている。

■微分音音楽

半音より小さい音程による音楽。4分音律は、バルトークのヴァイオリン協奏曲にも使用されている。他に6分音、3分音等も試みられている。

■原始主義音楽

原始音楽のもつリズムや楽器編成を模倣するもので、ストラビンスキーによって試みられた。 現代音楽はさらに、騒音主義、具体音楽、電子音楽など、種々の試みが絶え間なく続けられている。

◆ジャズ - アメリカの文化 -


これはエーデルハーゲン楽団

ヨーロッパの新音楽運動の裏に、アメリカの大衆に、ジャズ音楽が生まれた。
1915年に、最初のジャズバンドがアメリカに公開されてから、これほどものすごい勢いをもって世界に広まった音楽はない。




元来ジャズ音楽はアメリカに住むニグロの音楽である。野性的でリズムに特徴があり、そもそもダンス音楽として起こった。つまり、文明社会にはなかったアフリカのニグロ音楽が、ヨーロッパの楽器を使うアメリカ人によって演奏され、それが短い間にアメリカの音楽となったばかりでなく、ロンドンに渡ってオペレッタと結びついて大衆化し、パリではカフェやキャバレーでもてはやされ、古典音楽の大きな遺産を持つドイツでも、大陸ジャズ、シンフォニックジャズとなって、10年を経ないうちに世界人類共通の財産となった。

ジャズはせまい意味では、アメリカの国民主義の音楽である。アメリカという国はおもしろい国で、コロンブスがこの国を発見してから、国民といってもヨーロッパからの移民であって、固有の文化というものがない。酒を例にとるなら、イギリスにはウィスキーがあり、フランスにはワインがあり、イタリアにはヴェルモントがあるのに、アメリカにはその全部があって、アメリカにしかないものはないのである。それでアメリカ人はそれらを混ぜ合わせてカクテルを作った。これがアメリカの文化であって、音楽におけるジャズは、ニグロの音楽とヨーロッパの楽器と、ヨーロッパの音楽の理論を、アメリカ人の趣味で混ぜ合わせたカクテル音楽といってよい。

ジャズ音楽の生命はリズムにある。それがダンス音楽として発達した所以でもあり、世界的に大衆化した理由でもある。

そしてこれが現代音楽に影響した点も大きい。ジャズのリズムをとったものにはストラビンスキーの「ラグタイム」などが有名だが、サティー、ヒンデミット、ミロー、ラヴェル、オネゲルや、その他多くの作曲家がこれを利用した。また、楽器編成も、サキソフォーンやジャズ打楽器、金管楽器の弱音器奏法などを取り入れたものが作られている。

さらに本国アメリカでも、「ジャズ交響曲」の試みもあり、ガーシュインは「ラプソディー・イン・ブルー」「パリのアメリカ人」に成功した。