-所有楽器(2018年1月現在)-
オールド・ヴィンテージを中心としたフルート

Wm.S.Haynes 総銀製

32300番台(1963年製)  リッププレート14K French Cups, H foot joint

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さめざめと泣くフルートです。古き良きアメリカの情緒的、かつ艶やかなキャラクター。ヘインズ黄金期のフルートは独特の音色をもち、中でも1950年代後期から1960年代前期にかけてのものが最高のヘインズトーンをもつと言われます。コントロールは難しいですが、オールドと現代の両方の良さがある、バランスのよい楽器です。管厚は0.014インチのソルダード。H足なのに薄管なのでギズモがなくても楽にC4が可能で、これは近現代の煩雑な曲のフィンガリングには便利です。この薄管の響き方が独特で、ワイドに広がる感じで遠くまで飛んでる感じです。総銀製でこの薄さに作るのは、現代では失われてしまった技術の様で、そのうえ、ヘインズならでは管のヴォイシングが独特な甘美な音になってる様です。感傷的な曲にもエキサイティングな曲にも適していて、本当はこれ1本でもいいくらいなのですが...。ヘインズばかり吹いている時はすこぶるご機嫌な音なのに、たまにしか吹かないと、ちょっと気難しく、慣れるのに少し時間を要します。いい笛は、一筋縄ではいかないもの。ルイロット並みの、なかなかのツワモノです。

Verne Q. Powell 総銀製

1500番台(1955年製)  リッププレート14K American Cups, C foot joint

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古い楽器なのにとても瑞々しく、ピュアで、ちょっとお澄ましさんな音色です。素朴で清らかと思いきや、時にとても色気のある表現をします。オールドパウエルは現行モデルとはかなり音色が異なり、音楽を知っている職人の魂を感じます。0.016インチ(0.40ミリ)が主流な現代で、この時代のソルダードの薄管、0.014インチ(0.35ミリ)は、ホールでの音の広がり方が独特で、古いフランスのオーケストラの録音で聴ける様な、優しく香り高い響きがあります。どんな曲でも合いますが、パワーより品の良さを引き出すのが巧い楽器です。

Louis Lot 木製

初代 Esprit(1855-1875) 円錐型(コニカル管)コーカスウッド 1370番台(1870年頃の作品)

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ルイ・ロットは、ルイ・エスプリ・ロットが1855年に創業したフルートの工房で、1876年のルイ・エスプリの引退後も代々の親方が楽器製作の技と工房の経営を受け継ぎ、20世紀半ばまで、数々の超一流のフルーティストに名器を供給してきました。 初代ロットはとりわけ貴重で、頭部管のカットや唄口の改造などない完全なオリジナルの状態ではあまり残っていません。このフルートはオリジナルな上に、ジャン・ピエール・ランパル所有の有名な、エスプリ唯一の金製フルートと相互に隣り合うシリアル番号です。初代ロットの音色は他にはない、本当に美しく、優しいもので、心が満たされます。

フルートは、昔と今とはかなり見た目も、システムも、音色もピッチも違っていました。17世紀初頭のバロック時代はルネッサンスフルート、バッハやヘンデルなど盛期バロック時代は1鍵式のトラヴェルソ、モーツァルトの時代は6鍵式クラシカルフルート、シューベルトなどロマン派の時代では、8鍵式ロマンティックフルートというように、様々に変化してきました。

現代のフルートは1832年にドイツで発表されたベーム式というシステムで作られていて、現代のメーカーのほとんどは金属製円筒型で作りますが、ベームが当初作ったフルートは木製円錐型でした。ベーム式は最初フランスのゴッドフロアとイギリスのルーダルカルテが特許を取得し、その後ゴッドフロアの弟子だったルイ・ロットが継承します。やがてヘインズなどに引き継がれますが、初代ロットは現代のフルートメーカーのお手本となり、フルートのストラディバリと言われています。

円錐管の良さはたくさんあるのですが、どうしても音量の無さのために円筒管にとってかわられたところがあります。ただ、フルートが表現するのは「静けさ」である、という言葉がある様に、トラヴェルソのような品があって色彩変化の豊かな音色で、かつ操作性はベームシステムという円錐管ベーム式フルートは、ある意味フルートの理想の形である、と言う人もいます。

この楽器はピッチが435周辺なので、442の現代のピアノとのアンサンブルは無理です。ハープやチェンバロ、ギターと専らご一緒しますが、C.P.E.バッハのハンブルガーソナタや、シューベルト、ジュリアーニの作品などにピッタリきます。

Louis Lot 総銀製

2代目 H.D.Villette(1876-1882) 3200番台(1882年の作品)

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二代目のルイロット、ヴィレッテによる作品で、昔ながらの古めかしい、 柔らかい音で、派手さや華やかさはないのですが、 19世紀フランスの音色のイメージそのものです。 ゴーベールが吹いていたのは、初代ロットですが、ヴィレッテはエスプリの弟子ですから、初代の音色に近くて、息を入れると特別な幸福感があります。改造のない完全オリジナルで二代目ならではの珍しいシステムは保存に値する博物館級です。前のオーナーはフルート奏者で作曲家のゲイリー・ショッカーでした。巻管特有の響き方が大変素晴らしく、ゴーベールやフォーレなどを演奏しています。

Louis Lot 総銀製

4代目 E.Barat(1889-1904) 5500番台(製造年不明)

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四代目のルイロット、バラットによる作品です。初めて手に入れたルイロットで、購入後すぐにオーバーホールに出し、約2ヶ月後に仕上って、その1週間後にリサイタルに使ったのが最初です。ホールでの響きが巻管独特で、ルイロットの存在感と比類ない美しさに驚きました。同時にそれはロットのコントロールの難しさを克服するための旅の始まりであり、のちにロットの魅力のみならず、オールドフルート全般に傾倒し、様々な旧い楽器への興味が芽生えるきっかけとなりました。過去の史実を知り、当時の職人の技術と感性に触れ、共に過すことは、自分の奏法や表現の開拓に、新たな道筋を導くものでした。ルイロットは別格であり、ルイロットは音楽を熟知していて、ルイロットは本質的な美しさの極みである、そして今ではもうロットしか吹きたくない身体になってしまい、吹く毎に魅力に囚われ、恋い焦がれてしまう。まさにこのフルートは、ずっと吹いていたいけど、使うのがもったいないと思わせるような、本当に美しい相棒です。

Louis Lot maillechort (マイショー管)

4代目 E.Barat(1889-1904) 6980番台(1902年の作品) リッププレート銀製

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四代目のルイロット、バラットによる作品です。素材は今で言う洋銀ですが、当時のフランスのmaillechort(マイショー)の音色は洋銀とは全く異なります。銀に劣る印象もなく、かつ銀とは違う性格ですので、曲によってはマイショーの方がしっくりくる場合もあります。甘いお砂糖の様な音だと思う時もあれば、濃厚なチーズみたいな時もあり、音楽の対話が楽しい楽器です。レッスンでこの楽器を使うことが多く、演奏会では美しいアンコールピースの演奏に適しています。初代や二代目の、魂の聴こえる、ロットらしい華やかな音色は秀逸ですが、四代目バラットは、音色、音程、操作性、いずれもバランスが良い気がします。自分の中で一番気が合う楽器です。

Louis Lot 総銀製 (現在貸与中)

6代目 G.Chanbille(1922-1951) 10300番台(1947年の作品)

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六代目のルイロット、シャンビーユによる作品です。歴代の、最後の工場長です。前のオーナーはアメリカの某音大の先生ですが、古楽専門の方なのであまり吹いていなく、ミントコンディションでした。もちろんオリジナルです。ロットは改造されたものが多く、初代か六代目しか信用しないと言っていた高名な先生もいます。私感では、六代目は現代のフルートに近く、音程もフィンガリングも扱いやすい気がします。音色の持つ存在感は初代、二代目、四代目と比較すると弱いですが、でもやはりロットの音色は健在で、十分にルイロットならではの表情や響きがあります。オールドヘインズやオールドパウエルと同様に、煩雑な近現代の曲にも対応できる操作性を持ち、かつロットの香りが満ちているフルートです。

Couesnon 木製

グラナディラ 製番なし 1930年頃の作品

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ケノンはかつてのフランス最大の管楽器工房で、木管楽器から金管楽器まで幅広く製造していたパリのメーカーです。マルセル・モイーズが自身のモデルの製造を任せていたことでも知られていて、あのゴテゴテしたデザインのフルートを思い起こしますが、この様なシンプルデザインで、しかも木製という、レアなフルートです。とっても柔かい、しっとりとした音色で、ずっと吹いていたい、聴いていたいと思わせるフルートです。フレンチウッドですが、モーツァルトやハイドン、ベートーヴェンのソナタ、ライネッケやクーラウもいい感じです。音程やフィンガリングのコントロールは簡単ではないですが、フレンチのオールド木製にしてはバランスよく吹きやすい方だと思います。

Godfroy

4代目 Clarisse(1868~1888)の作品と思われるが実態は不明。

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製番なく謎の多いフルート。頭部管maillechort。主管と足部管は銀製、キイmaillechortで他のメーカーかもしれません。ボロボロだったのですが、こういう不遇な楽器を見ると、助けたくなって、お迎えしてしまうのです。

Rudall Carte 木製

円筒型コーカスウッド 7500番台(1940-1950年の作品) 頭部管内銀 C足・H足(by Alex Eppler)

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この楽器の前のオーナーはアメリカの有名なウッデンフルーティストの、Felix Skowronek 先生 です。2006年に他界され、遺品となってからは吹かれていなかった様で、手元に来た当初は全くというほど音が出ませんでした。オーバーホールして1年経過して、だいぶ楽器がよみがえってきましたが、それでも相当難しいフルートです。しかし、この楽器を手にしてから次第に身体が変わっていくのを感じました。なんとか吹きこなそうとする中で、楽器が奏法を教えてくれて、他の楽器を吹くと信じられないくらい楽に吹けるようになったのです。フェリックス先生の魂がこもった素晴らしい音色を、少しずつですが引き出せる様になりましたので、自分史上最強の、ハードストイックのトレーニングフルートです。あまりにも吹きにくく難しいので、本番ではまだ2回しか使ったことがありません。

August Seidel 木製

グラナディラ 660番台 1930年頃の作品と想像している。

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ザイデルは、知る人ぞ知るドイツ、ハンブルグの隠れた名工。あまりにも情報がなく、詳しい事がわからないのですが、作りも音色も表現も、ドイツ独特の強固でどっしりしたものです。来歴は購入時に調べていただいて、前の所有者は日本のプロ奏者の方で、その前の所有者は、日本在住のドイツ国籍のプロの方、その前の所有者は、フライブルクの教授でオーケストラ奏者とのこと。A.R.ハンミッヒとデザインや音色が似ているので、師弟か何かかと思ったのですがあまり関係はないらしい。吹奏感は野太い感じ。バッハはじめ、ドイツ音楽がしっくりくる。こんなに素晴らしい楽器なのに、あまり知られていないということに、シンパシーを覚えて愛情を注ぎたくなってしまうのです。超レアでマニアックな愛すべきフルートです。

August Richard Hammig 木製

グラナディラ 2100番台 1940年頃の作品

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リヒャルト存命の頃の作品です。経年による良質な木が、柔らかくて潤いのある音色を醸し出し、厳しさと、愛情を併せ持つバッハの音楽などに合います。なにかとよく演奏会で使う楽器なのですが、それは、私が初めて所有した木製のヴィンテージフルートでして、思い入れがあるからです。木製には、人を慰める美しさがあるように思います。何より自分が心を満たされます。A.R.ハンミッヒは新品で現行モデルもあり、それも試奏したあとにこの楽器と出会いました。初代オーガスト・リヒャルトの手によるこの楽器は本当に美しい音色で、楽器が音楽を知っていて、「こんな表現もあるよ」と、自分に話しかけてくる気がしてなりません。音色はもちろんですが、キーデザインでも、フランスとドイツの感性の違いが見て取れて楽しいです。ロットなどに見られる丸みのある繊細さに対して、ドイツの楽器は、ポストの太さなどが強固で温かい印象を与えます。

Anton Braun 木製

グラナディラ 60番台 1990年代の作品

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アンドレアス・ブラウ先生が使用しているブラウン、もう新規の注文は受けてくれないらしいので、楽器店に、中古が入荷したらすぐに知らせてもらうようにお願いをしていました。入手以来、メインのフルートとしてほとんどの本番で使用しています。現代の楽器のブラウンですが、その性能と個性的な音色は、オールドに魅せられた今も自分の興味を離しません。オールドに比べると吹きやすいですし、音程も音量も問題なく、それでいて音色も柔らかく、艶やかです。安心と信頼を寄せられる、頼もしい楽器です。

Philipp Hamming 650/4LTD 木製ピッコロ

管体グラナディラ材、E,G#メカニズム、キー銀製 19600番台。頭部管にはゲルハルト・ハンミッヒのウェーブ管

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とてもいい音がします。他のピッコロを吹くと、物足りなく思うほど。

muramatsu 14K RHE

14KRHE/メカニズム銀製、リングキー、インライン、Eメカ付、H足部管、引き上げトーンホール

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音大4年、1994年頃に購入したものです。当時、所沢の工場へ何度も行って、有名な製作者(演奏者としても素晴らしい)の青木宏氏と歌口の相談などを行い、作ってもらいました。音大から留学、仕事でと、20代、30代、苦楽を共に過ごした愛着ある楽器です。この時代のムラマツは、品があって、音色の変化も柔軟でよく歌います。手放そうとしたこともありますが、離れたくないという声が聴こえ、40代の今も手元において可愛がっています。四半世紀も近くにいる楽器なので、楽器に命が宿っている様です。

Miyazawa Atelier-1

頭部管銀製 管体・キイ=洋銀製 銀メッキ仕上げ

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体験レッスン用、稀にある屋外本番用、もしくはPAの入った本番などで使用しています。洋銀のフルートですが、洋銀と思えないほどまろやかな音がします。他の楽器を修理中にメーカーから借りた非売品だったのですが、あまりにいい音色で気に入ってしまい、無理を言って売ってもらいました。

ウジェーヌ・クレイネン/G. A. Rottenburgh *Flauto traverso (現在貸与中)

ボックスウッド、人工象牙、銀

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18世紀オランダのG. A. Rottenburghのトラヴェルソ、クレイネンの作品です。トラヴェルソを勉強することで、モダンフルートの音色、表現力も磨かれます。本当は、トラヴェルソをもっと本格的にやりたいのですが、なかなか状況が許されず、ベーム式との両立は難しいみたいです。


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