-アフェクトについて-

ギリシアのプラトン以来、身体を清めてくれるのは、医術、魂を清めてくれるのは、音楽、との位置づけがあり、音楽が魂を癒し、清めてくれることで、人間は徳を向上させ、神を賛美することができる、と考えられていた。C.P.E.バッハも、「音楽はとりわけ心を動かさなければならない」と言っている様に、当時、音楽というものは、人の感情を揺り動かす力のあるもの、と考えられていた。

人の「感情」や「心」を紐解いてくれるのがアフェクト(情念)、という言葉である。C.P.E.バッハによると、良い演奏表現とは、「その曲の持つ真の内容とアフェクトを聴衆の耳に感じ取らせる」ことと言っている。

アフェクトは、17世紀の哲学者デカルトが使った言葉で、彼は、基本的な情念を、「驚き」「愛」「憎しみ」「欲望」「喜び」「悲しみ」の6つに分類した。これらは、私たちの精神の内に生じる、一種の受身な感情で、身体からの働きかけ(血行の変化、涙、汗の分泌など)によって起こる、「心自身の状態の感じ」である、という。デカルトはこのような「受動的」(に生ずる)感情を、「知性と意志の力で能動性に支配することが、真に自由で高貴な生き方である」とした。音楽することは、まさに知性と意思の力でアフェクトを表現する行為である。


C.P.E.バッハから学ぶこと(正しいクラヴィア奏法より)


「正しい運指法、適切な装飾法、よい演奏表現、この3つが、密接に結びついて正しい演奏法になる」

「演奏家には、良い演奏表現の規則に即した技量を持っているだけでなく、次のような多大で困難な技術が要求される。
・あらゆる種類のファンタジー(即興演奏)を行うこと。
・与えられた楽句を、厳格な和声と旋律の規則にしたがって即座に労作する。
・どの調の曲でも楽々と演奏し、瞬時に、しかも誤りなしに移調する。
・即座に初見で演奏する。
・通奏低音の理論を完全に掌握する。

「教師は、生徒に対して、最良の指使いを確信を持って示さないといけない。それには、少数の良い主要規則があればよいこと、そして、それを熱心に練習することで、ほとんど機械的に弾けるくらいまでにしておかなければならない。なぜならば、指使いを少しも気にかけることなく、全く自由に、もっと重要な ”表現”に思いをいたすことができるようになるためである。」